今季のインフルエンザ流行の予測について
10月に入りました。当院におきましては例年通りインフルエンザワクチンの予約を開始しました。
果たして今期はインフルエンザの流行はあるのでしょうか?
昨シーズンは、新型コロナ感染症とインフルエンザが同時に流行するのではないかと随分心配されました。しかし、国立感染症研究所の統計によりますと2019年の9月から2020年の3月までのインフルエンザの患者数は全国で約14000人でした。例年約1000万人が罹患するわけですからじつに700分の1の患者数でした。熊本におきましてもほぼ流行はありませんでした。
その原因としましては、やはり、国民がコロナ対策としてマスクの着用や手洗い、うがいを励行したからではないかと言われています。そうであれば今期もインフルエンザの流行はないのではないかと思われます。
しかし、今期はインフルエンザとコロナの同時流行を心配する専門家が多くいます。それも世界的な流行が懸念されています。なかには大流行を予測している専門家もいます。
それはなぜかといいますと、まず今年のRSウイルスの流行が上げられています。RSウイルスはほとんどの人が2歳までに罹患すると言われており、例年、秋頃から始まり年末頃がピークで3月頃まで続きます。ところが今年は6月に始まり7月まで流行しました。
国立感染症研究所によりますと今年はRSウイルス感染症が7月までに2018年、2019年の患者総数を超えたようです。この現象は日本のみならず米国、英国、フランス、南米などでもおきています。しかも2歳以上の感染が例年になく増加しています。これは、ウイルス疾患の感染状況が変わりつつあることを示しています。
アメリカ疾病予防管理センター(CDC)は、インフルエンザ流行のサイクルがコロナ以前に戻っている可能性が高いと警戒しています。
その他、世界的にコロナに対する対策が緩和されつつあることがあげられます。これは同時にインフルエンザの対策も緩んでいることになります。また、昨シーズンにインフルエンザの流行がなかったことによる人々のインフルエンザに対する免疫力の低下が指摘されています。とりわけ、小児の免疫力の低下が心配されています。
CDCはこの対策としてインフルエンザワクチンの接種を推奨しています。
これらのデータがすべて当たるとは限りませんが、やはり備えておくことは重要であると思います。
よって、当院としましてもインフルエンザワクチンの接種を推奨したいと思っています。
令和3年10月
会長 医学博士 宮村健一郎